「微笑む慶喜」戸張裕子著、河合重子監修
■最後の将軍の晩年をアルバムで振り返る
最後の将軍、徳川慶喜の晩年を多くの写真と史料で読み解いていくビジュアル歴史読み物。
朝敵の汚名を着せられ静岡で謹慎生活を送っていた慶喜は、明治30年に勝海舟らの働きかけで東京に戻り、翌年、親戚筋にあたる有栖川宮威仁親王の力添えで、かつての居城であった江戸城への参内が実現、明治天皇に謁見(えっけん)する。
冒頭に取り上げられる紋服姿の肖像写真は、写真好きだった自身が撮影したと思われる62歳当時のもの。当初、大礼服がないと参内のご下命を辞退していた慶喜は、天皇から「和服にても苦しゅうない」といわれ、初参内はこの紋服姿で出かけていったという。
以後、参内を重ね、明治35年には、公爵に叙せられ名誉回復を果たす。御授爵のために参内した慶喜は、親授式前のため爵位服ではなく「五七桐の大礼服」を着用して2頭立ての馬車で宮中に向かった。
連日、御授爵を祝う祝賀会が催され、大勢の旧譜代大名らが集まった旧御譜代衆主催の祝賀会や、星岡茶寮で設けられた徳川三家ら主催の祝賀会などの記念写真が残っている。