「池永康晟画集君想ふ百夜の幸福」池永康晟著
泣き腫らし、まぶたを腫らした「朋子」さん〈嗚咽(おえつ)のあと〉や、ミレーの代表作「オフィーリア」を思い出させる〈振袖心中〉、浴衣の帯を解いて、誘うように振り返る「真美」さん〈如雨露〉など、思わせぶりな作品に、ついついモデルと画家との関係を勘ぐってしまう。画家が「わたしは描くことで表現しようという気はまったくない。私にとって描くことはセックスすることと同じだから」と語っていると知り納得。
「セックスは果ててしまえばおしまいだけれど、絵なら何日でも何日でも絵筆で触れて、愛した人の肢体を愛撫していいのでしょ」とも語る画家が、モデルと過ごした濃密な時間が封じ込められた作品の数々に酔う。
(芸術新聞社 2800円)