「荒野の古本屋」森岡督行氏

公開日: 更新日:

 趣味と実益を兼ねる仕事ができると喜んだのも束の間、現実は甘くなかった。入社早々、店番ひとつできない自分に気づかされたのだ。

「かなりの読書量を自負していたけれど、お客さんのレベルが違う。尋ねられる書名が聞いたこともないものばかりで対応できないんです。それでも、上司に励まされながら必死で覚えました。お客さんが先生だったあの頃の体験があるからこそ、何とか今、古本屋店主をやっていけている気がします」

 2006年、偶然に通りかかった茅場町で、昭和初期の現代建築を見つけた著者。ビルの3階にあった古道具屋が店を閉めることを知り、衝動的に“ここで古本屋をやる”と即決してしまったという。自転車操業すらままならない苦しい経営が続いたが、それでも今年で開業8年を迎えた。

「膨大な品ぞろえが可能なスペースもないし、超貴重な古書を買い付ける資力もありません。しかし、その中間に位置して、私がこれだと思えるこだわりの本を、把握できる数だけ取り扱う。古書との時間がゆったりと流れる空間づくりを守り続けていることが、功を奏しているのかもしれません」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕がプロ野球歴代3位「年間147打点」を叩き出した舞台裏…満塁打率6割、走者なしだと.225

  2. 2

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  3. 3

    “玉の輿”大江麻理子アナに嫉妬の嵐「バラエティーに専念を」

  4. 4

    巨人「先発6番目」争いが若手5人で熾烈!抜け出すのは恐らく…“魔改造コーチ”も太鼓判

  5. 5

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  1. 6

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 7

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  3. 8

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  4. 9

    大江麻理子アナはテレ東辞めても経済的にはへっちゃら?「夫婦で資産100億円」の超セレブ生活

  5. 10

    裏金のキーマンに「出てくるな」と旧安倍派幹部が“脅し鬼電”…参考人招致ドタキャンに自民内部からも異論噴出