「大東京ぐるぐる自転車」伊藤礼著
68歳から自転車に乗りだして10余年、元大学教授の著者は、今やどこに行くにも自転車だ。ペースメーカーを装着した体で、4万キロを走破してきたという氏による自転車エッセー。
事のはじまりは、勤務先の大学に自転車で行ってみようと思い立ったこと。12キロの道のりをたった1・5キロこいだだけで力尽き、立ち尽くしてしまったという。しかし、ときには骨折するほどの転倒を味わいながらも次第に自転車に慣れ親しむ。渋滞を避け横道に入れば、高校生のときに新聞で読んだ老舗タイヤキ屋に遭遇、公園の石碑の銘文に、永井荷風の一文を思い出すなど、自転車視点ならではの東京散歩の成果をつづる。
(筑摩書房 880円+税)