「“悪夢の超特急”リニア中央新幹線」樫田秀樹著
10月17日、国土交通省はリニア中央新幹線の工事実施計画を認可した。これによって、着工はもはや確実となったと言ってよいだろう。
品川から大阪までを1時間7分で結び、そのスピードから“夢の超特急”とうたわれるリニア。しかし、樫田秀樹著「“悪夢の超特急”リニア中央新幹線」では、リニア構想の裏側に国民生活を揺るがしかねない大きな問題が隠れていることを浮き彫りにしている。
リニアには超電導磁石が格納され、両脇の壁に電流が流されることで反発が起こり車両が動く。このために消費される電力は、品川-大阪で74万キロワット。これは、東京電力と中部電力、関西電力の発電量の“わずか0・6%”と説明されてきた。しかし、ひとつの会社のたったひとつの路線が、これほどの電力を消費するのは日本最大級だと本書。そしてリニア実現のためには、原発の稼働が不可欠となる可能性が高いことについても言及している。
また、リニアの総事業費も問題だ。全長の9割がトンネルを走ることになるリニアのトンネル工費は、1キロあたり約200億円と見積もられている。しかし、これは甘い試算だ。実際、東京中央環状線のトンネル工費は1キロあたり700億円、地下鉄では300億~500億円かかっている。革新的技術の場合、当初の見積もりの数倍の出費がかかるのが常だ。リニアの総事業費は、計画当初は3兆円といわれてきたが、90年代には5兆円に、そして最近では9兆円ともいわれている。採算が合わず経営破綻が起きた場合、税金によるシワ寄せを食うのは我々一般国民だ。