海外小説を読む楽しみ編
元メキシコ連邦警察の警官から密売組織のボスに転じ、「コカインの帝王」と呼ばれるようになった「エル・パドリーノ」と、彼の組織に潜入して密輸を手助けする代わりに信頼を得て、警察と軍双方の庇護下にあったエル・パドリーノに打撃を与えた米麻薬取締局(DEA)の特別捜査官・キキの物語をはじめ、中南米から欧州への輸送を請け負う犯罪組織「ンドランゲタ」や、アフリカのギニアビサウで運び屋に仕立て上げられる若者、そしてエルサルバドルのギャング団「マラス」の取材中に殺されたジャーナリストなど。
コカインに関わるさまざまな人々を描きながら、麻薬が生み出す資金が世界を侵食していくさまを暴く。
(河出書房新社 2600円+税)
■「海を照らす光」M・L・ステッドマン著、古屋美登里訳
オーストラリア本土パルタジョウズ岬から160キロ離れたヤヌス・ロック。1924年4月、灯台守のトムと妻のイザベルしか暮らしていないこの絶海の孤島に一隻のボートが流れ着く。中には男の遺体と生後間もない赤ん坊が乗っていた。トムはイザベルの願いを聞き入れ、規則を破って赤ん坊をルーシーと名付け、2人の娘として育てる。