ミドルエージの危機を乗り切る編
男は男らしく、強くあらねばならない……。そんな一面的な男性論からこぼれ落ち、年齢特有の厚い壁に直面する中高年男性が増えている。仕事や家庭をはじめ、あらゆる面でストレスがのしかかり、精神的に追い詰められる「ミドルエージクライシス」は社会問題になりつつある。そんなつらい現実に負けないために読んでおきたい、4冊を紹介する。
■「男性漂流」奥田祥子著
長年にわたって男性が抱える悩みを取材してきたジャーナリストが、インタビューも交えながら彼らを苦悩のふちに追い込む子育てや老い、仕事などの問題を分析。ミドルエージクライシスを乗り越えるためのヒントを探っていく。
人生とは予定通りにはいかないものだが、中高年男性の生活を大きく変えてしまう最大の問題が、介護である。介護を担うのは女性という時代はもう昔。2012年の総務省の調査によると、同居か別居かにかかわらず介護をしている人は約557万人。うち男性は200万人強でおよそ4割を占め、3人に1人が40~50歳代の働き盛り世代だ。
飲料メーカーで次長職に就く東京都内在住のKさんは46歳。介護が必要な妻の母親と同居しながら、北関東で独居の実母の介護も引き受けていた。介護休暇の取得も考えたが、部下を束ねる管理職としてはとても言い出せる状況ではない。追い詰められたKさんは、出勤途中の満員電車で強い動悸と息切れに襲われ、パニック障害を発症してしまう。