海外小説を読む楽しみ編
(東京創元社 1700円+税)
■「民のいない神」ハリ・クンズル著、木原善彦訳
2008年、ウォール街で働くジャズは妻のリサと4歳の息子ラージを連れてカリフォルニアへ家族旅行に出かける。自閉症のラージの子育てで心身ともに弱り、夫婦の間にできてしまった亀裂を修復するのが目的だった。モハベ砂漠にそびえる3本の尖塔状の岩山ピナクルズを訪ねた一家だが、目を離したすきにラージが消えてしまう。先住民の間であの世とこの世を結ぶ場所とされるこの土地では、18世紀にキリスト教の伝道師が天使の姿を目撃、19世紀にはモルモン教の暗殺組織に属する男が飛行船に招き入れられ、20世紀半ばにはこの土地の放つエネルギーに吸い寄せられた男が円盤と遭遇するなどしていた。
いくつもの時代と空間を往還しながら進む「超越文学」。
(白水社 2900円+税)
■「コカイン ゼロゼロゼロ」ロベルト・サヴィアーノ著、関口英子、中島知子訳
地球の隅々にまで浸透するコカインを巡る現実を伝えるノンフィクションノベル。