阿部治氏が薦める「地方創生」のあり方がわかる3冊
「地方創生の正体/山下祐介・金井利之著」は、地方創生に一石を投じる著作を書いてきた社会学者山下と自治行政学者の金井が、政府による「地方創生」を批判的な対論を中心にまとめられている。
本のタイトルと目次の刺激的な見出しからもわかるように、国=中央集権国家による「地方創生」のうさんくささを縦横無尽に語っている。そもそも人口減少社会へのアイデアを持たない政府が自治体を競わせ、敗者を淘汰しようというのが「地方創生」であると看破し、真の地方創生を実現するためには国(統治)、自治体(自治と行政)、市民(参加と主体)の関係性を見直すことが必要であると、実に多くの角度から論じている。
そして自治体には、発想の転換や内発的アイデアの必要性を説く。
「ひらく美術/北川フラム著」は、「地方創生」以前から都市一極集中、地方の過疎化にアートによって挑戦するという発想の転換で取り組んだ北川の「地域とつながる」芸術論である。今や世界最大級の国際芸術祭となった「大地の芸術祭」がなぜ地域再生として成功したのか、地域(の人々)に寄り添う北川の言葉から、真の地方創生につながる希望が見える。地方創生策の主要な柱に移住者の確保があり、事実、少なからずの人々が都市から地方に移住し、多様な暮らしを楽しんでいる。
「ローカル志向の時代/松永桂子著」は、このような動きの社会的背景を個人の帰属意識の変化から探る。地場産業やまちづくりの具体例を通じて、顔の見える関係などを重視することによって生まれる、経済に代わる「新たな豊かさ」を求める変化を予見している。