「東京都三多摩原人」久住昌之著
〈三多摩〉とは東京都の23区と島嶼(とうしょ)以外の地域で、元は神奈川県だったので住民は〈江戸っ子〉じゃない。三鷹生まれの著者は、はるか昔の祖先、三多摩原人の生活をしのぼうと、子どものころ遊んだドブ川などを回ったが、生まれ育った家の中を歩いてみようと、老いた両親が住む実家に向かう。
台所に立つと、中学時代に母が作ってくれた弁当を思い出した。前夜のイモ天を醤油と砂糖で煮たものがメーンの地味弁だったが、うまかった。脱衣所に掛かっていたバスタオルに「2年1組久住卓也」と弟の名が書いてあった。45年前のタオルだ。人気漫画「孤独のグルメ」原作者の自伝的エッセー。(朝日新聞出版 1600円+税)