「黒涙」月村了衛著
現役大臣の病気という国家機密が中国政府に漏洩していたという失態を受け、警視庁公安部は対中国防諜作戦を目的とする特別チームを編成。警視庁組織対策部第2課の沢渡警部補も、中国語が堪能なことを買われチームに参加する。しかし彼は、中国黒社会の義水盟の幹部・沈と兄弟の契りを交わし内部情報を流す「黒色分子」だった。
今回、公安が対象にする天老会は義水盟と敵対関係にあることから、沈もインドネシアの青年実業家ラウタンを沢渡の元へ送り込んで、公安の作戦を裏から支援する。ラウタンの活躍で作戦は順調に進んでいくかに見えたが、彼の前に謎の美女、シンシア・ユンが現れる。ラウタンは罠と知りつつもユンに近づいていくが、彼女には底知れぬ闇が潜んでおり、その深い闇へ引きずり込まれていく……。
日本の警察小説には珍しく、中国、東南アジアの裏社会を背景に、熾烈な諜報活動を描くグローバルな視点の作品。沢渡が黒色分子になる経緯を描いた「黒警」の続編。(朝日新聞出版 1600円+税)