「ニャンニャンにゃんそろじー」町田康ほか著
島田魁は11年前から京の西本願寺で守衛をしている。日勤の守衛がしかめっ面をして「またあの猫がいるんです」と言う。闇の中にいる黒猫を見つめていると、声が聞こえた。――すまん、あんたがどないかしてくれたんやな。相手はどないなやつやった? その声は数十年前に死んだ男の声だった。
魁は若い頃、剣術の道場で知り合った永倉新八に誘われて浪士組に入り、隊の内外を監視する〈監察〉を務めた。黒猫を見るたびに、魁の耳に既に死んだ、あのころの隊士たちの声が聞こえるようになり、思い出したくないことまでよみがえらせた。(小松エメル著「黒猫」)
町田康、有川浩らが書いた猫の短編や、ねこまき作のマンガなど9編。(講談社 1400円+税)