「ネメシスの使者」中山七里著
熊谷で65歳の女が殺された。傍らに〈ネメシス〉の血文字が残されていた。「復讐」あるいは「義憤」の女神を意味する言葉だ。被害者は6年前の通り魔殺人事件の犯人の母だった。19歳の女子大生と12歳の女児を包丁でめった刺しにして殺した犯人は死刑を免れ、無期懲役で服役中だ。母親が包丁で刺殺されていることから、通り魔事件の遺族の復讐ではないかと思われた。
ところが、〈ネメシス〉の文字が残された2件目の事件が発生。被害者は4年前のストーカー殺人事件の犯人の父だった。犯人は懲役18年で服役中で、両裁判とも同じ判事による「温情判決」といわれた。これは死刑を回避した判決への第三者の抗議なのか……。
司法の正当性を問う意欲作。(文藝春秋 1700円+税)