「黒い波紋」曽根圭介著
加瀬将造は元刑事。現役時代、個人情報を横流ししていたことが露見し、退職。その後、ダイニングバーを開くが経営に行き詰まり、多額の借金を抱え、妻子にも逃げられる。その後は便利屋のアルバイトをしながら、借金返済と養育費の支払いに追われている。ある日、彼が小学校1年生のときに家族を捨て家を出ていった父親が死んだと知らせを受ける。金目のものがないかと父親のアパートを家捜しすると、毎月どこからか30万円の現金が振り込まれていて、天井裏にはVHSのビデオテープが隠されているのを発見。テープにはあるスキャンダラスな映像が写っており、父親はこれをネタにゆすっていたのではないか。そこに写っているのは地方の有力政治家だと分かり、将造は月30万などとケチなことはいわず、大金をせしめようと画策する……。
うまく運ぶかに見えたが、政治家一族の権謀術数、30万円の振り込みの真相など、欲と権力が絡み合いながら、意外な方向へと展開していく。江戸川乱歩賞作家の注目作。
(朝日新聞出版 1500円+税)