「わたしが消える」佐野広実著
マンションの管理人をしている元刑事の藤巻は、医師から軽度認知障害だと告げられた。動揺している藤巻に、娘の祐美から電話があった。離婚したときはまだ乳飲み子だったが、今は女子大生で、福祉施設で介護実習中だ。施設の門の前に座り込んでいた認知症の老人の身元調べをしてほしいという。一緒に来た人物に置き去りにされたらしい。
藤巻は、施設に何度か様子を見に来た老女に声をかけた。老女は小さな飲み屋をやっていて、認知症の老人は店の客だった。しばらく一緒に暮らしていたが、身元も何も知らないという。老人が持っていた布袋には、それぞれ違う名前のパスポート、学生証などが入っていた。
とんでもない過去を持っていた老人をめぐるミステリー。
(講談社 1800円+税)