ライオンに噛まれて「いい経験」と語った畑正憲
畑は声も上げず冷静に左手で右手を押さえ、自ら止血の措置を取る。この時、周りのスタッフは誰も異変に気づかず、カメラマンはその一部始終を撮り続けており、結局このシーンはそのまま放送された。
その後、事態が明らかになり、畑はブラジルの病院で手当てを受けたものの、番組の取材と収録は何事もなかったように続行した。
帰国後の会見では「これぐらい私にとって何でもない。噛まれて、動物の習性が学べて、うれしい。今回はいい経験になった」と涼しい顔で語って報道陣を驚かせた。
だが、さすがに痛くはあったようで、雑誌の対談で「ボクはしょっちゅうケガをしているから、今回も本当はたいした問題じゃなかった。でも、痛みは今回が一番。『ヤクザはよく詰めるな』と感心しました」とも語っている。
畑正憲は東大理学部で動物学を学び、動物に関わるエッセイスト、作家として活動。71年、北海道厚岸郡の無人島に熊や馬とともに移住し、さらに翌年、浜中町に移り「ムツゴロウ動物王国」を開園する。ここでの動物との触れ合いや、スタッフの若者たちとの共同生活はマスコミに注目され、80年から21年間続いたドキュメンタリーシリーズ「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」は人気を集め続けた。