「婚活刑事」の見どころは連ドラ初主演・伊藤歩の“座長芝居”
伊藤歩という女優を初めて見たのは約20年前。岩井俊二監督の映画「スワロウテイル」だった。独特の世界観で構築された架空の街で生きる、娼婦の母親を持つ少女の役だ。当時15歳の伊藤は、三上博史やCHARAといった個性派に負けない存在感を放っていた。
その後も映画やドラマで活躍を続けており、昨年の「昼顔」(フジテレビ系)でも、斎藤工のエキセントリックな妻を好演している。そんな伊藤にとって、この「婚活刑事」が民放連ドラ初主演だというから驚く。ようやく時代が伊藤歩に追いついたのか。
両国署・刑事課の巡査部長、花田米子が伊藤だ。35歳、独身、結婚願望あり。だが、実生活で好きになる男は、なぜか犯罪者となってしまう。逆に言えば、米子が好意を持った容疑者が真犯人ということになりそうだ。
先週の第1回も、再会して一瞬恋心を抱いた高校時代の同級生(和田正人)が犯人だった。しかし、これだと毎回登場するゲスト俳優が犯人である可能性が高い。バレバレだ。その辺り、いかにして視聴者の予想を裏切ってくれるのかが見どころとなるだろう。
結婚へとつながる相手と犯人の両方をさがし求める婚活刑事。その笑える設定を、伊藤は生真面目に、そして楽しそうに演じている。これはもう、ひたすら伊藤の座長芝居を見るべき一本だ。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)