<第1回>「とにかく現地に行って徹底的に取材してくれ」
「ロイター通信によりますとパレスチナ解放戦線が犯行声明を出したという情報もあります」「アメリカFOXテレビによりますと航空機が激突し6人が死亡、およそ1000人が負傷したということです」「ワシントンの国防総省ペンタゴンにも航空機が激突したという情報も入ってきました」
発生当初は情報が錯綜するものだが、しかしそれ以上にあまりの衝撃に事態をうまくのみ込めないというのが実際のところだった。
世界貿易センタービルはニューヨーク市マンハッタン島最南端にあり、アメリカの金融を支えるウォール街の一角にある。金融業界を中心におよそ1200の企業が入っており、1日5万人の人が勤務しているという。調べると多くの日系企業も入居していた。日本人の被害者もいるかもしれない。
早速編集部は現地取材を決め、私と入社3年目の同期T記者とI記者が任ぜられた。
「とにかく現地に行って徹底的に取材してくれ」
デスクはこう命じた。新聞・テレビのような大手メディアと違い週刊誌に支局はない。人数も限られている。ただひたすら自力で取材するのみだ。重責を負うと同時に使命感もあった。どこへ当たろうか、と取材の段取りを考えていると、「ああっ」とテレビ前から大きな悲鳴が聞こえた。ツインタワーが大爆発し、摩天楼にそびえ立つ超高層ビルが無残にも崩れ落ちたのだった。