福山雅治主演「三度目の殺人」 是枝監督が明かす撮影秘話
「キャストには真相を明かさず撮影していたので、撮影途中で福山さんが役所さんに『ホントは殺してるんですか?』って聞きに行っていたほど。疑心暗鬼の中で弁護せざるを得ない弁護士の心情を見事に表現できていたので、結果的にはよかったと思います。でも三隅が本当に殺したか否かは、実は最後まで決めずに撮影していたんです」
撮影中でも脚本の改変をいとわぬ演出で知られる是枝監督は、今回も毎日のように加筆変更しつつ挑んだ。
「ただアート系映画ならともかくメジャー作品ですから、この演出は賛否両論でした。でも福山さん自身が『ライブだって皆で音を出して初めてどんな曲になるかわかる』と、製作サイドを説得してくれたんです。『ジョン・ウー監督(〈君よ憤怒の河を渉れ〉のリメークを福山主演で製作中)だってもっと脚本なかったですよ』って(笑い)」
本当に殺したのか否か、演者さえ真相がわからぬまま結末に向かう展開は、まるで対立陣営をフェイクと喧伝して真実を覆い隠す現代社会を暗喩しているかのようだ。
「真実が曖昧なまま人が裁かれている。これを制度として受け入れねばならない社会に私たちが生きている怖さ、現実を知ってほしいとの思いで作りました」
全世界に叩き付けるリアルな社会派ミステリーで、ベネチアを制することができるか。