目覚めると激痛が…歌手の市川由紀乃さん卵巣がん手術を振り返る
市川由紀乃さん(歌手/49歳)=卵巣がん
「悪性の可能性が高いので入院、手術が必要です。仕事はいったん全部ストップしてください」
それは2024年6月、ちょうど松平健さんの座長公演に出させていただくことになって、1回目のお稽古を終えたところでした。「すぐ来てください」と病院から連絡をもらって稽古場から病院に行きましたところ、こう告げられてしまったのです。
翌日のお稽古にはもう出られず、松平さんをはじめ、たくさんのみなさんに本当に大変なご迷惑をおかけしてしまいました。
23年ごろから不正出血や腰痛、鼻血などの症状が現れていました。でも自分はずっと健康で、本当に病院にお世話になることのない人生を歩んできたので、かかりつけ医もいなくて病院もよく知りません。50代を目前に、ホルモンバランスの変化から体が変わる時期だということはわかっていましたし、周りの先輩方も「私もそういうことあったわ」とおっしゃるので、「これは誰もが通る道なんだ」と、あまり重く受け止めていませんでした。
でも、由紀さおりさんが背中を押してくださいました。由紀さんにはずっとお世話になっていて、その時期もお仕事でご一緒することが多かったのです。「最近どう?」と気にしてくださり、近況をお話ししたところ、即座に「まずは検査を受けなさい」とおっしゃって、由紀さんが信頼する病院の先生を紹介してくださったのです。その上、先生と連絡を取って、1週間後に検査を受けられるように段取りまでしてくださいました。
由紀さんの計らいで受けた血液検査とMRI検査の結果が、前述の「悪性の可能性が高いので手術が必要」という内容です。まったく予想していなかった展開で言葉が出ませんでした。
その時はまだ「卵巣腫瘍の疑い」という診断でしたが、手術は確定していて、お仕事は休止させていただきました。
入院したのはそれから1カ月後です。その間に検査をしたり、口腔内の処置をしました。口の中に虫歯などがあると、その細菌が手術した部位に感染するリスクがあるからだそうです。
手術は開腹手術と聞いていました。でも手術の不安より、自分のことでたくさんの方々にご迷惑をおかけしたこと、応援してくださる方にご心配をおかけしたことが申し訳なくて、頭の中はそのことでいっぱいでした。 手術前日から絶食し、当日は水も制限される中、手術室までは徒歩でした。扉が開くと、そこはまるでテレビドラマの世界。たくさんの機械や器具が並ぶ景色に圧倒されながら、「ここで手術を受けるのか」とドキドキしながら手術台に乗りました。
痛かったのは、その直後、腰に麻酔注射を打たれたときです。同じ手術をした友人から「かなり痛い」とは聞いて覚悟はしていたのですが、想像をはるかに上回る痛さで、思わず「痛ーい! 痛ーい!」と声を張り上げちゃいました(笑)。
その後は意識がなくなって、気づいたら手術が終わっていましたね。
6時間の手術で卵巣と子宮、リンパ節、腹膜を切除しました。採った組織を調べた結果、「卵巣がんステージ1」と判明したので、後に抗がん剤治療もすることになりました。