「ユリゴコロ」監督が太鼓判 吉高由里子は愛憎が似合う
23日から公開となる映画「ユリゴコロ」(東映・日活)は、不思議な引力がある。原作は「映像化は不可能」といわれた沼田まほかる氏の同名ミステリー小説。ダークで心がザワザワするストーリーだ。脚本・監督を務めた熊澤尚人氏(50)は、クランクインの前に掲げたビジョンと、主演女優・吉高由里子(29)だけが持つ魅力を引き出すことで見応えのある映像作品に仕上げた。
本作は、人の死でしか心を満たすことができない女性・美紗子の物語。原作は2012年に大藪春彦賞を受賞し、本屋大賞にもノミネートされた。複数のチームが映画化に名乗りを上げ、激しい争奪戦が繰り広げられたが、企画が動き出した途中で頓挫したケースもあったという。伏線やトリックが複雑で、映像化すると物語として成立しない危険性もはらんでいる。“監督泣かせ”の作品だった。
「イヤミス」(読んで嫌な気持ちになったり、後味の悪さを楽しむミステリー)といわれるジャンルだけにエグいシーンも多い。だが、熊澤監督は「エグさこそが『ユリゴコロ』の持ち味。先の展開が知りたい、続きが読みたくなる原作の世界観をリスペクトして脚本を手がけた」と話す。