「保毛男」論争 人権と情熱の間に横たわるコンプラ問題
「バラエティ番組はいわゆるスピード違反で叱られる時がある でもそれはテレビを面白くしたい情熱だったりする。今のテレビを面白くなくしてるのは叱られることを恐れすぎのスピードださなすぎ違反だと思う」
もちろん人権への配慮は十分なされるべきで、フジの「保毛尾田保毛男」は言語道断にしても、制限や自重ばかりではテレビがますます面白くなくなってしまうという声は実際にバラエティー番組関係者の間からも上がっている。芸能リポーターの城下尊之氏はこう言う。
「まず、テレビマンは総じて視聴者からの批判を受けたくありません。サラリーマンの皆さんならお分かりだと思いますが、今回のフジテレビでのように社長が公に謝罪するようなのは最も避けたい最悪のケースなのです。昨今は15~20年前までは問題視されなかった表現もアウトだったりするので、何かというとコンプライアンスの部署に問い合わせます。そして、ちょっとでも危ないとなると、放送を見合わせる。もちろんチェックは必要です。でも、実はちょっとした工夫や配慮を加えればOKということもなくはないんですね。例えば『女中』という呼称は今そのまま使えばアウトですけれど、『うちのお袋は若い頃の仕事を女中だと言っている』というような場合、どうかという検証が十分でなかったりする。『女中』でいえばかねてこの国では家庭や旅館などに住み込みで働く女性をそう表現していたのは事実なのですから。そうしたことを十分に調べることなく、一様に『お手伝い』に変えてしまう傾向にあるのが、今のテレビなんです。それが表現を狭め、結果的に面白さを奪ってしまうということもあるのかも知れません」
コンプライアンスをお題目のように唱えて冒険心と情熱を忘れたらテレビは死んだも同然。「何でもアリ」のネットに駆逐されるのも仕方がないか。