直木賞作家・葉室麟さん死去 「定年は“あがり”ではない」
日刊ゲンダイで時代小説「おもかげ橋」「鬼火」を連載した直木賞作家の葉室麟さんが23日午前2時、病気のため福岡市内の病院で死去した。66歳だった。50代での遅咲きデビューで、直木賞受賞は60歳。残された時間はあまりないと、精力的に作品を発表していた。葬儀・告別式は近親者のみで営む。
北九州市出身、西南学院大卒。地方紙記者などを経て、2005年に「乾山晩愁」で歴史文学賞、07年に西国の小藩を舞台に老境に差しかかった男2人を主人公にした「銀漢の賦」で松本清張賞を受賞。
日刊ゲンダイのインタビューに「定年は“あがり”ではなく、20歳くらいで社会に出た時と同じように、役職とかいろんなものを脱いで、もう一度“素裸”の人間として生きる機会だという気がするんですよ」と話していた。
12年に5度目の候補に挙がった「蜩ノ記」で直木賞受賞。小藩で切腹を命じられながら藩史編纂に取り組むかつての奉行と、監視役を命じられた武士の交流を描き、役所広司主演で14年に公開された映画もヒットした。16年には「鬼神の如く 黒田叛臣伝」で司馬遼太郎賞受賞。11月に西郷隆盛を主人公にした「大獄」、今月は松平春嶽を描いた「天翔ける」を出版したばかりだった。