「弱者」の立場に立たない ミッツ・マングローブの“誇り”
テレビに最初に声がかかったのは、女装家仲間のマツコ・デラックスだった。ミッツのいとこの徳光正行の紹介で「5時に夢中!」(TOKYO MX)にピンチヒッターでゲスト出演したことがきっかけでレギュラーとなった。ミッツもやはり徳光正行の紹介で番組内の「通販コーナー」に出演。その後、「女子アナ」的なポジションに“昇格”した。
いずれも「女装×通販」「女装×女子アナ」という強烈な“違和感”がおかしみを生んでいた。そうして、ミッツは「オネエブーム」の波にも乗って、テレビの真ん中に躍り出ていった。そんな「オネエブーム」をミッツはこのように分析している。
「いろいろな集団にわかりやすく『不幸』というレッテルを貼り、その範囲内で消費しようという傾向が強くなっている。そういう中で私たちは面白おかしくも扱えるし、かわいそうな話にも扱える『有能な弱者』というポジションなんでしょう」(朝日新聞出版「AERA」17年6月12日号)
けれど、ミッツは「弱者」という立場には絶対に立たない。例えばテレビでは、あえて「オカマ」を自称する。今では「ホモ」同様に差別語と言われ、使いづらい言葉だ。されど、ミッツは自分の存在を「差別語」扱いされる方がよっぽど嫌だと言うのだ。「弱者」でいる限り偏見や差別はなくならない。
「逆風の中にいる誇りというものも持ち続けていたい」(同前)