佐藤弘道さん「おかあさんといっしょ」初日に父が亡き人に
引き受けると母がひとりでやきとり屋をやらなきゃいけない。でも、「そんなチャンスはないから行ってきなさい」と母が背中を押してくれて。2カ月ほど収録に立ち会って振り付けのレッスンを受けました。スタジオに子どもがいっぱいいて「楽しそうだなぁ!」と思いましたね。
そして、私と歌のおにいさん、歌のおねえさんも代わる最初の収録日、忘れもしない93年3月14日です。
その日の朝、父が50歳の若さで亡くなりました。病院で父の死に顔を見てからNHKに向かったのですが、入院していれば治るものだと信じていたので、すごくショックで。
担当ディレクターの方だけに事情を話して、本番。当時は3本撮りでしたが、1本目と2本目の記憶がまったくない。ショックと、これから一家の大黒柱としてやっていく不安と、テレビデビューでわけがわからなくて……。
収録の間に父はお寺に運ばれていて、収録後に駆けつけた時は少し冷静になれましたが、“長男の私が店を継がずに母に店をひとりでやらせて、体操のおにいさんをやっていっていいのか”と自分の選択が正しかったのかわからなくなった。それでも、収録は始まったし、年間契約だから、やるしかない。