「駅 STATION」高倉健と3人の女が織りなす別れのドラマ
桐子はちょっとお人よしの女。三上と同様に孤独を抱え、ささやかな幸せを求めている。だから三上は警察を辞して桐子と生きる道を選ぶ。
だが運命は冷酷だ。桐子のもとに立ち戻った情夫は同僚を殺した仇だった。かくして三上は恋人から警官の顔に変貌。一発の正義の銃弾が彼と桐子の希望を打ち砕いてしまった。恋人の情夫を撃った男と撃たれた女。恨みはなくても、深い溝は埋めようがない。
最後の居酒屋の場面で三上が声を出して列車の時刻を調べるのは桐子を札幌に誘っているのかもしれないが、彼女は振り返ろうとしない。八代亜紀の「舟唄」を聴く桐子の頬を流れる涙が、観客の胸にやるせない余韻をもたらすのだった。
(森田健司)