矢沢永吉“大物の証し” 批判メールに堂々と反論できた背景
矢沢ほどの大物になれば、普段だったらそんな中傷メールにいちいち反応しないだろうが、今回の日比谷野音だけは特別の思いがあった。1975年に彼がいた人気バンド「キャロル」が解散。ソロデビューした矢沢が翌年に初めてライブを行ったのが野音だった。彼にとっては会場が小さく、その後はもっと大きな会場に変わったので、43年ぶりの野音ということに意味があったのだ。矢沢にとって特別ということは、古くからのファンにとっても特別なものだ。原点のステージに立って現在までを振り返る意味もあった。
そして、この野音はライブの人気会場で、土日祝日などは2年近く先の会場を押さえなくてはならないくらいスケジュールが埋まっている。すぐに延期できない状況だったので、矢沢がせめてリハーサル風景の配信をすることを決めたのも分かる。そういった特別な感情が怒りを抑えきれないコメントに変わったのだろう。さらに、それを可能にした背景もある。
かなり以前から矢沢はレコード会社も関係なく、自分のレーベルでCDを発売しているし、ライブ制作も全部、自分の会社でやっていて、いい意味でのワンマンであり、常に自分が思い描く最高のパフォーマンスを目指せる環境にある。
また、矢沢のファンは熱狂的で“矢沢信者”でもあるから、希少性の高い小さなライブ会場のステージが延期になっても、何年先でも黙って待ってくれたに違いない。矢沢が本音をリアルタイムで吐き出せたのは、しがらみや制約のない環境だからできたことでもある。