芸能人移籍トラブル必至の声が…“新契約書”のお粗末な中身
■育成費用とはグレーなもの
これらの説明を聞く限り、一見するとタレントが所属事務所から移籍するに際してハードルが下がったかに見えるが、現場の評判は総じてこの見方に対して否定的だ。理由は2つある。
一つ目の理由は、音事協が新たなひな型で明示したとされる「育成費用が回収できていない場合」という条件が非常に曖昧なためだ。この問題は“公正な第三者”を両者の間に入れて「『ここからここまでが育成費用です』としっかりと線引きができなければ、タレントと所属事務所との間に必ずトラブルが発生するだろう」と関係者は断言する。それでも双方が納得するかは分からない。それほど育成費用とはグレーなものなのだ。
二つ目は理由は、音事協がひな型改善の目玉と胸を張る「移籍金制度の導入」にしても、その移籍金がどのような根拠によって算出されたものなのか、それをめぐって双方の間でトラブルに発展するのが目に見えている。
移籍金そのものの合理性と透明性が求められるというのである。
「公正取引委員会の周知により光が当たったタレントの移籍問題ですが、依然として話し合いは密室で進められていますし、内容も決してタレント本位の中身とはとてもいえないお粗末な代物といっていいでしょう」(芸能関係者)
公正取引委員会の介入によって始まったタレントと所属事務所の関係の健全化の動きだが、“ポーズ”で終わらないことを祈るばかりだ。
(芸能ジャーナリスト・芋澤貞雄)