「病室で念仏を」伊藤英明はキワモノかと思ったが結構骨太
今期、医療ドラマが複数並んだが、中でも異色の一本が「病室で念仏を唱えないでください」だ。何しろ主人公の松本照円(伊藤英明)は、「医師にして僧侶、僧侶にして医師」という変わり種。僧衣をまとい、亡くなった方のために霊安室で「お経」を唱え、入院患者の「心のケア」みたいな活動もしている。
当初、一種のキワモノかと思ったが、実は結構骨太な作品であることがわかってきた。それを支えているのがエリート心臓血管外科医、濱田(ムロツヨシ)の存在だ。腕がいいだけでなく、野心家であり、自身の名声のためなら手段を選ばない。
そんな濱田が執念を燃やしているのが、「こどもハートセンター」の設立だ。先週も、重い心臓病の少女を救うことで、祖父である心臓外科学会理事長(きたろう)に恩を売り、医師会の応援を得ようとしていた。
その手術には、ペースメーカー会社から賄賂を受け取っていた若手医師の手助けが必要で、濱田は手術終了までは彼をかばう。そして手術後、「おまえの悪は小遣い稼ぎで、僕のは患者に必要な悪」と追い出した。「医師はカネや法や正義ではなく、命の奴隷だ!」と見事なタンカを切って。
正義か悪か、シロかクロかでは割り切れない、「命と医療」の領域。ドラマの中で松本が口にした「両忘(二元論から脱する)」という禅の言葉も印象に残った。