「3密最前線」としてヤリ玉に…ついに渋谷で感染者が出た
「まさか……まさかとは思うが……」
私が口火を切った。
「それが……そのまさかなんです」
「おいおい、悪い冗談はやめてくれ」
「3月20日、渋谷<ロフトヘブン>で2人ほど感染者が出ました。保健所の指令で明日、ライブ現場の消毒を行います」
私は言葉を発する気力を失ってしまった。
「発熱の症状を訴えている店員もいます。感染源ですが、どうやら当日の演者(出演者)さんだったようです。さすがに演者さんの熱を測ったり、病状を確かめたり、それはできませんでした。それにしても演者さんが持ち込んでくるとは……。本当に参りました」
加藤社長の言葉を聞きながら、私は1971年3月に<烏山ロフト>をオープンした当時を思い出していた。一国一城の主になって誇らしかったが、1~2週間もすると閑古鳥が鳴いた。閑散とした店内で呆然と立ち尽くす毎日。49年後にコロナ禍でロフトが存続の危機に瀕するとは……。 (つづく)