離婚の噂を直撃のはずが…吉田拓郎の自宅で見た巨人広島戦
近所の聞き込みから取材を開始するが、「あまり見かけない」という話しかない。閑静な住宅街を人気歌手がそうそう出歩くこともあるまい。家に残る妻の直撃に踏み切った。目黒にあった豪邸。一軒家は夜のほうが部屋の明かりで在宅か否かわかりやすい。夜の取材は暗黙のうちに9時ごろまでを常識な時間にしていたこともあり、8時すぎに訪ねた。インターホンなどない時代。玄関の呼び鈴を押した。
「だれだ!」と野太い男の声だった。奥さんがいるはずなのに――。「奥さんに別な男?」、そんなことが頭をよぎった。ドア越しに奥さんの在宅を尋ねると、出てきたのは吉田拓郎本人だった。言葉を失った。
「なんだこんな時間に、女房に何の用だ」と語気を強め、「中に入れ!」と、手を掴まれ部屋に入れられた。外に声が響くことを配慮したのだと思うが、まさかの展開に慌てた。入ってすぐの応接間に通され横に座らせられた。
ビールを飲みながら巨人―広島戦の中継を見ていたのがわかった。広島出身の吉田は熱烈な広島ファン。広島が負けていた。話しかける余地はなく、一緒に野球を見るしかなかった。
CMの間に「こんな時間になんだ」とお説教が続いた。別居話など切り出せる余裕がない。9時に放送が終了すると、「もう帰れ」と少し穏やかな顔で言われた。帰り際に我慢していたトイレを貸してもらえたのは助かったが、記事はボツに。それから半年後ぐらいに吉田は離婚した。 (つづく)