追悼・須藤甚一郎さん 相手の逃げを許さない高度な屁理屈
もちろん、今の時代に小水は論外だが、小水という言葉の印象に巻き込み、相手を逃れられなくさせてしまう、言葉の高等テクニックであった。 須藤さんはよく「屁理屈を言い続けて30年だから負けないよ」と言っていた。ある俳優が「リポーターはウンコにたかるハエだな」と言ったが、須藤さんはすかさず、「じゃあ、芸能人はウンコなんだ」と切り返した。やはり屁理屈では誰もかなわなかった。
僕もテレビの番組全体会議でやっつけられたことがある。詳しいことは言えないが、ある芸能ニュースだった。僕はコトの経緯を説明して「抑えた内容で放送しよう」と要望を出した。
だが、みんな納得してくれた時、須藤さんが声を上げた。
「城ちゃんには騙されない。このネタのことは知らないが、何か怪しい」 鋭いカンを働かせたらしい。結局、僕は裏側の背景まで説明せざるを得ず、「全員、この部屋を出たら今の話はNGでお願いします」と頭を下げることになった。
須藤さんは「そうだ、それでいい」と笑顔だった。仲間を信じることの重要性を教えてくれた。 突拍子もなく、時におちゃめで、そして仲間思いな人だった。