南北問題を描いた「愛の不時着」を北朝鮮はどう見たのか
“北朝鮮を美化している”という批判は正反対の立場からも寄せられている。まだ放送途中だった今年1月9日、監督と放送局に対する告発状がソウル警察に届いた。提出したのは保守派のミニ政党、キリスト自由統一党だ。
いまも北との緊張関係にある韓国は、「反国家団体」の活動を称揚・鼓舞したり国家の騒乱を先導した者は7年以下の懲役に処する、と定めた国家保安法がある。同党は、北朝鮮住民に好意的な「愛の不時着」の描写がこれに違反すると主張しているわけだ。
ただし、警察が捜査に着手したとの知らせはまだない。韓国では過去にも南北問題や朝鮮戦争を描いた映画「シルミド/SILMIDO」(2003年)、「ブラザーフッド」(04年)が同様の告発を受けたことがあるが、いずれも起訴に至らなかった。
高い人気を獲得しつつ、南北それぞれの立場から非難も招いた「愛の不時着」。一方でイ・ジョンヒョ監督は、昨年12月の制作発表会でこれは「ファンタジードラマ」だと発言している。難しいことは考えずに感情移入したほうが、存分に楽しめるのは間違いない。 =つづく