<2>写真は親父を見ていて覚えた!下駄職人なのに撮影上手
この写真、親父が撮ったオレなんだよ。1歳ぐらいかなぁ、もうちょっと赤ちゃんかな。おチンチン出して、もうこの頃から、ちゃんとヌードやってるね(笑い)。親父、こんな写真を撮っておいてくれてね。面影あるっていわれるけど、そうかなぁ?(笑い)
親父は、(台東区)三ノ輪で下駄屋(「にんべんや履物店」)をやってたけど、写真が好きで、うまかったんだ。アマチュアだったけど、すごく評判がいいカメラマンで、近所から頼まれて七五三の写真だとか地元の幼稚園や小学校の記念行事の写真も撮ってた。オレがカメラで最初に見たのは、親父の暗箱カメラからのぞいた逆さまになった小学校の校舎。暗幕をかぶってね。
その時に、キザなことを言うと、孤独感とかなんとかを感じ取っているんだよ。そこでは画面と自分だけになる。世間というか、世の中と対峙して、他に誰もいなくてさ、建物が逆さまに写ってる。今でもはっきり覚えているよ。だって通っていた東泉小学校の校舎だもん。
学校の卒業写真集を作る仕事とかも頼まれるんだよ。今はそういうのを作っているかわからないけど、最初のページに校舎がくるわけ。暗箱を組み立てて撮るっていう時に、助手で付いて行ったんだ。助手っていっても何にもしないんだけどね。「ノブ、行くぞ」って。校舎を撮って、その次は生徒たちが並んでいるのを撮る。三脚も木でさ、組み立てカメラで、ガラスの乾板で撮るんだ。ピント合わせて、「よし、これでいこう」って。オレとおんなじでバカなことを言って生徒を笑わせたりするんだけど、三脚が倒れないように番をさせられてね。
その時だったね、ちょっと背伸びして、のぞいたんだ。背を高くしないと見えないからね。