怪談の基礎知識<下>客席を盛り上げる幽霊もいる!
松鯉師匠の「乳房榎」はこの「重信殺し」を口演する。芝居だと後半へと続き、庄助が榎の滴を飲ませて重信の息子、真与太郎を育て浪江をあだ討ちする。
「小幡小平次」は、おちかの情夫である太九郎が、夫の小平次を釣りに誘い出し、舟から突き落として殺す。これで邪魔者が消えたとばかりに喜んでおちかのもとへ帰ると、そこにはなんと自分が殺したはずの小平次が……。その後、小平次の幽霊が2人を苦しめる話だ。
寄席の客席がパッと真っ暗になるだけでもヒヤッとするが、実はもっと怖い演出もある。
「『幽太』という役があって、黒い着物を着た幽霊役が幽霊のお面をつけて客席に出てきて、お客さんを怖がらせるんです。もちろん今でもやってます」と松鯉師匠。今年は新型コロナウイルスの影響で幽太の登場はなかった。来年に期待だ。
(構成=浦上優)