師匠の家に弟子入りした俺を待っていた2人のオカマ兄さん
つまり、そんな清く正しい談州兄さんをオカマ呼ばわりしている俺はよい言葉で言えば人間のクズ、そして悪い言葉で言えばダニみたいなものだったのであろう……。
だけど、自己弁護するわけではないけど、俺がテキトーだったのは決して俺だけの問題ではなくて、すぐ上の兄さん(確か入門半年くらいだっただろうか?)の談六の影響が大きかったのだ。
小づくりでどこか全体的にポッチャリとした談六兄さんは以前は美容師をやっていたということであった。
職業上なのだろうか? やたら口数が多く、しかも女性のお客さんに語りかけるような「アラ、それだったらこーじゃない」「あれしちゃおうよ!」の口調に加え、なぜかヒザを合わせるような内股で歩く人だったのだ。そのくせ二言目には「やらなくていいんじゃない、どーせ談州兄さんがやってくれるって!」とポッチャリと柔らかそうな肌に、うっすらとつねに汗をかきながら卑屈な笑みを浮かべるのだった。
談六兄さんに関してはよく言っても悪く言っても「ダメな人」以外の言葉が見つからない人であったのだ。というか、今思い返したら俺ってオカマ兄さん2人と毎日行動をともにしていたってこと??? そんな歴史に埋もれていた真実、今さらどーでもいいよ~!!
そうして数カ月の日々が過ぎていったある日、1階の書斎で書き物をしていた師匠が「オイ! おまえさん、今日から名前これになるから!!」とマジックペンで書かれた文字の紙を俺に差し出したのだった。そこには見慣れた師匠の字で「談かん」と書かれていた……。 (つづく)