「この野郎!」東映の大部屋を差配するボスを殴っちゃった
「当時の東映は、大部屋に4年在籍すると正社員になれた。月給がもらえてボーナスも出たんだけど、役者でなく撮影スタッフや宣伝部なんかに配属されることもあるんで、やめるなら今だとやめたんです。一度も映画のクレジット(出演者の名前)に出たことがないままね。それで青山のスーパー、ユアーズでのバイトに逆戻りよ」
1971年、この年三郎は25歳になった。
「ユアーズに面倒見のいい先輩がいて、舞台の仕出し(エキストラ)専門の芸能事務所を紹介してくれた。コマ劇場の歌手公演が多かったね。当時はお芝居と歌謡ショーの2本立てで、美空ひばりさん、村田英雄さん、島倉千代子さん、坂本九さん、いろんな歌手の公演の仕出しを4年やりました。かつらの羽二重を付けるのを自分でできるようになった。そのおかげで、今舞台の仕事をしててなんの不自由もない。どこで役に立つかわかんないもんだね」
しかし、30歳を前にして、仕出しの仕事に疑問を持った。
「役者として、こんなもんで終わるんだろうなと考えると暗くなっちゃって、足を洗う決心をしました」