島木譲二の巻 場違いな“パチパチパンチ”披露のエピソード
大阪名物“パチパチパンチ”といえば島木さん。ヤクザや取り立て屋などで登場してはギャグを連発、最後は周囲からボコボコにされて、逃げ帰るというギャップで関西人の心をつかんで離さない吉本新喜劇の重鎮でした。2016年にお亡くなりになった際、新喜劇の内場勝則元座長が「一流ホテルみたいな方でした」とコメントされたのは、どんな役どころでも、制作者側の無理な要求にでも応えてくださった人柄を称してのこと。「できません」とは絶対言わないだけでなく、求められたもの以上の芸を見せるのですから、超一流コンシェルジュです。
60本ほど書いた新喜劇の脚本で、一度、島木さんを主人公にした「恋愛物」を書きました。たしか、タイトルは「恋のチュ~イングボ~ン」。うどん屋の大将・島木さんが店員の未知やすえさんに恋をして、周囲の力を借りながら何度もアタックを試みて、最後にめでたしめでたしとなるお話です。
台本にテッパンの「パチパチパンチ」も入れましたが、島木さんは真顔で「ストーリーから考えていりませんやろ?」と言ってこられました。実は私も同じ。でも、劇場には地方からお越しになる方も多く、人生で一度きりの生の舞台かもしれない。だったら“大阪名物”を生で見たいはずと考えて、その思いをお伝えし、テレビではカットしてもらいますので、やっていただけないかとお願いをしました。