震災から10年で番組続々 Nスペ注目は仙台・荒浜16年の記録
震災翌年の12年6月に放送された「イナサがまた吹く~風寄せる集落に生きる~」では、仮設住宅で暮らす荒浜の人々の震災後1年間の営みが紹介された。
震災の直後、津波で漁船「大吉丸」を流されて悄然としていた佐藤さんが、23日後に沖合で奇跡的に船が見つかり、「77歳だけど、50歳のつもりで働かないとね」と喜ぶ姿が印象的だった。
荒浜の漁船50隻のうち助かったのはわずか5隻だけ。漁師仲間の松木さんの「喜代丸」は見つからなかったが、その松木さんも、やがて中古の漁船を買って漁を再開する。
震災当時17歳の高校生だった吉男さんの孫の眞優子さんは、漁を再開した吉男さんに手作りの大漁旗をプレゼントした。高校卒業後、髪を金色に染め、耳にいくつものピアスをした眞優子さんは、就職先が見つかるまで吉男さんを手伝うと言っていた。祖父思いの眞優子さんが現在、どうしているのかも知りたいところだ。
旧荒浜集落の人々は、仙台市の復興計画により内陸部に集団移転。その跡地は市が買い取り、公園やスポーツ施設として整備される途上にある。震災後10年間の旧荒浜集落の人々の暮らしに寄り添って制作された番組では、津波によって「失われたもの」「変わらないもの」「守り継がれたもの」が淡々と、しかし丹念に描かれる。