著者のコラム一覧
細田昌志ノンフィクション作家

1971年、岡山市生まれ、鳥取市育ち。CS放送「サムライTV」キャスターから放送作家としてラジオ、テレビの制作に携わり、ノンフィクション作家に。7月に「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」(新潮社)が、第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

児玉誉士夫の要請で上海で興行会社起業 淡谷のり子ら招聘

公開日: 更新日:

 そこで、獄中で親しくなった野口進の存在が浮かんだ。甲子園球場や旧国技館など大観衆の前で試合を行った人気ボクサーにして、元首相を殺そうとした壮士である。この男なら、名前も腕力も申し分ない。興行会社を起業させるのに、これほど適任の男はいないと踏んだ。

 かくして野口家が渡った上海は、第2次上海事変が一段落し、戦時中なのが嘘のように、比較的平和で自由な空気が横溢していたという。日本国内では、洋式の芸名を変えるように再三警告され、官憲に睨まれていたディック・ミネも、拠点を上海に移し気ままにジャズを歌った。淡谷のり子も早い段階から上海に拠点を移したと回想している。

 実質的に切り盛りしていたのは、母の里野である。京都生まれ。家出して上京し、有楽町や神保町のカフェで働いていたところを野口進と出会い結婚、20代にして早くも波乱の半生を送っていた。そんな里野は頭脳明晰、公用語の北京語もいち早くマスターし、ギャラの交渉のみならず現地人とのやりとりも一手に担っていた。

 この野口興行部は一見希少なように映るが、実はまったくそんなことはなかった。ルポライターの竹中労は著書「タレント帝国 芸能プロの内幕」(現代書房)で次のように定義している。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高嶋ちさ子「暗号資産広告塔」報道ではがれ始めた”セレブ2世タレント”のメッキ

  2. 2

    大友康平「HOUND DOG」45周年ライブで観客からヤジ! 同い年の仲良しサザン桑田佳祐と比較されがちなワケ

  3. 3

    佐々木朗希の足を引っ張りかねない捕手問題…正妻スミスにはメジャー「ワーストクラス」の数字ずらり

  4. 4

    大阪万博開幕まで2週間、パビリオン未完成で“見切り発車”へ…現場作業員が「絶対間に合わない」と断言

  5. 5

    マイナ保険証「期限切れ」迫る1580万件…不親切な「電子証明書5年更新」で資格無効多発の恐れ

  1. 6

    阪神・西勇輝いよいよ崖っぷち…ベテランの矜持すら見せられず大炎上に藤川監督は強権発動

  2. 7

    歌手・中孝介が銭湯で「やった」こと…不同意性行容疑で現行犯逮捕

  3. 8

    Mrs.GREEN APPLEのアイドル化が止まらない…熱愛報道と俳優業加速で新旧ファンが対立も

  4. 9

    「夢の超特急」計画の裏で住民困惑…愛知県春日井市で田んぼ・池・井戸が突然枯れた!

  5. 10

    早実初等部が慶応幼稚舎に太刀打ちできない「伝統」以外の決定的な差