最悪だった開会式 165億円もかけて、なぜキティちゃんもドラえもんも使わなかったの?
デーブ・スペクター(テレビプロデューサー)
今まで、こんなにイチャモンをつけられた五輪はなかったよね。1年延期になったから、それも仕方ないけど。
そもそも、コロナ禍で国民の自由は奪われ、飲食店は「営業妨害」と言っていいぐらいの自粛を強いられているのに、なぜ五輪だけ特別なのか、というのもある。無観客になっても、首都高の料金は1000円追加だし。“ボッタクリ男爵”顔負けのボッタクリじゃないの。
それに、誘致の時に約束したことも何ひとつ実現できていない。むしろ真逆。良いところをアピールしたいから合コンでウソをつくのと同じで、誘致でも、かなり盛ったと思うけど今回はあまりにもヒドイ。特に「復興五輪」なんて言ってはいけなかった。政治利用したのは許しがたい。しかも、「理想的な気候」とまで偽った。招致委員会は誰も天気予報を見なかったのかな。今どき、珍しいよね。
■国立競技場のイスを作った人に金メダルをあげたい
最悪だったのは開会式。4時間もやる必要ないし、165億円もかけた割に内容がイマイチだった。日本が世界に誇るアニメとかロボットとか、何もない。前回のリオ五輪の閉会式で安倍さんがマリオで登場したプロモーションビデオには、キティちゃんもドラえもんも入っていたのに、何で開会式に使わなかったの? 開会式は注目度が高いのに、もったいない。唯一良かったのは、国立競技場のイスかな。人がいるようにペイントしているでしょ。昼間はそれほど奇麗じゃないけど、開会式は夜だったから、本当に人がいるように見えた。これを作った人に金メダルをあげたい。
こうしたことは、あまりテレビでは言えない。テレビだとコメンテーターが競技を見て「勇気をもらった」とか、お決まりの文句を並べるばかり。
でも、スポーツとして、どこまで十分な競争になったのか。日本人選手の方が競技場まで通い慣れているし、食生活も全く変わらないし、日本のコロナ対策に動揺しない。そもそも、コロナ禍で参加を辞退した選手もいる。
ホームアドバンテージは仕方ないにしても、基本的に無観客だったから、観客がいた方がモチベーションの上がる選手にとっては戦いづらかったと思う。
変な哲学のせいで何も言えないシラけた雰囲気
パンデミックにおいては、開催する勇気よりも、開催しない勇気の方が立派ですよ。
「アスリートに罪はない」とか、よく言われるけれど、選手は自分の生活のためにもやっている。ヒーロー扱いしたり、妄信的にほめたりするのはどうかと思う。難しいところだけどね。
ただ、五輪はプロスポーツと違って「ピュアさ」を尊重しなければならないという違和感がある。野球でもサッカーでも、プロスポーツには、みんな「何だ、今のプレー!」って怒鳴ったりしているじゃないですか。五輪特有の何も言えない空気って何なのかな。美化しすぎているから面白くないし、「平和の祭典」とか変な哲学や思想を入れるからシラケる。正直、大谷翔平のホームランダービーの方が楽しかったでしょ。世界平和とか、誰か言った? 純粋な競争だから見ている方も楽しいんです。
五輪は純粋にスポーツ競技として成り立っていないし、エンターテインメントにもなっていない。
「平和の祭典」と言ってもいいのは、ボートぐらいじゃない? “平和島”だけにね(笑い)。
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▽デーブ・スペクター
米国でテレビプロデューサー、放送作家として活躍し、1983年、米国ABC放送の番組プロデューサーとして来日。ツイッターのフォロワー数は、約190万人に上る。