中川家<下> 兄弟ならではの「あうんの呼吸」と自在アドリブ
■「なんでも好きなように」
2人は若手時代から「つかみ」と「おち」、最初の入り方と最後の終わり方だけをきっちり決めて、本ネタの部分は舞台で演じながら固めていくというネタの作り方をしていましたが、毎回の舞台が真剣勝負。お客さんに満足してもらわないといけませんから、少しずつ変化・進化をしながらもその都度、完成度の高い漫才をやっていたことになります。現在も聞いたことがあるようなネタでも、まったく同じということはないはずです。
以前、桂文珍師匠がプロデュースされた落語を芝居仕立てで見せる「立体落語」で「壺算(つぼざん・巧妙な手口で壺を値切って買おうとする男の噺)」という古典落語の演目に中川家が主演しました(共演・なだぎ武君とおばたのお兄さん)。台本を担当させてもらった私は、ガチガチに書き込むことはせず、話の筋立てがわかるように最低限のセリフだけを書き、本読みの稽古で40分超になる程度の台本にしました。後は中川家の2人に「セリフの言い回しはしゃべりやすいように変えてくれればいいし、ニュースでも身近に起こったことでもなんでも好きなように入れてやって」と預けました。
力を信頼していなければこんなことはできません。本番では毎回違うアドリブのかけあいをして、演目から離れることなく1時間近い芝居にしてくれました。
年齢を重ねることで、ますます自然体の「立ち話漫才」を進化させてくれることと思います。