<73>野崎幸助さんの不自然な死 不審な点があり解剖された遺体
マコやんがフォローをした。
「アプリコは赤字で、オレのポケットマネーで赤字を埋めてやっているんだから、いつでもやめていいんだ」
常日頃ドン・ファンはそのように言っていたが、かなりのウソがまじっていることはうすうす分かっていた。利にさとい彼が赤字会社を運営することなどあり得ず、貸金業も国に利率を下げられた瞬間にやめてしまったのだから、機を見るに敏な彼が慈善事業をするワケがないのだ。
早貴被告はそのようなことを理解している様子もなく、ただただコックリとうなずいているだけだった。
「あのな、これは事件だからキミたちは疑われるかもしれないよ」
死後硬直の謎をしゃべり早貴被告と大下さんに宣言すると、2人はギョッとした表情を浮かべた。
「お久しぶりです」
夕方4時からは自宅に葬儀屋さんがやってきて打ち合わせがあるので、その前にアプリコに行くとドン・ファンの知人で弁護士事務所の事務員をしている60代後半のMが来ていた。1カ月前の4月13日、ドン・ファンの喜寿の誕生日に六本木のホテルで会って以来である。