<107>早貴被告は週刊文春の記事をヒラヒラと揺らして笑った
「何でもいいから吉田さんの悪口を教えてくれって電話がきていますよ」
後輩記者の数人から、そんな電話が入ってきていた。
「キャバクラ通いはないのか? 愛人はいないのか? とも聞かれました」
銀座や六本木の高級クラブに通うような習慣はないし、仕事以外で行くこともない。せいぜい赤提灯の居酒屋で飲んで帰るのがパターンだ。それなのに記者たちはドン・ファンと私が田辺市内で飲み歩いていると勘違いして、スナックなどが集まっている繁華街の味光路を取材して回っていたようだ。
前述しているようにドン・ファンが田辺で飲み歩くことはなく、私も繁華街に姿を現したこともないのだから無駄足だった。それでも私がドン・ファンにタカっていたという記事を作ったのには、あきれるばかりであった。名誉毀損で訴えるべきだという友人も少なくなく、私も裁判で勝てる自信は満々だったが、かける労力と損害賠償の金額が見合わないと思ってやめた。
「吉田さん、仲がいいところを見せつけてやりましょうよ」