<109>家政婦の大下さんは自ら進んでマスコミの取材に応じた
家宅捜索に立ち会うために東京へ向かった早貴被告を見送ると、家政婦の大下さんと番頭格のマコやん、それに私の3人は、マコやんの行きつけの喫茶店で話をしていた。
前夜は陽気だった大下さんは、モーニングメニューを待つ間、別人のように塞ぎこんでいた。
「どうしたの? 大下さんの逮捕なんてあり得ないから」
「そうかなあ」
「大下さんはサービス精神が旺盛だから、やっていなくても『やりました』って言いかねないからね」
私が大下さんの気持ちを楽にしようと思ってギャグを飛ばしても、まるで乗ってこない。
「あのね、妹に『疑われるような親族がいると子供の就職試験にマイナスになるから困る。無実なら自分から主張して』って言われたのよ」
「そんなひどいことを言われたの? お姉さんのことは信じているから、と言うのが筋だろうに」
「そりゃあ、そうや」