河瀬直美さんの在野精神はどこへ…アーティストは未来の評価を気にかけるべきだ
ナチスの将校と恋愛関係にあったデザイナー、ココ・シャネルも不遇な晩年を過ごした。
仏ファッション界に多大な貢献をした彼女のお墓はパリになく、スイスにある。オペラ「カバレリア・ルスティカーナ」で知られる作曲家マスカーニはムソリーニ政権に協力して、戦後に全財産を没収された。
考えてみてほしい。ピカソが評価されるのは「ゲルニカ」で戦争の悲惨さを描いたからだ。モーツァルトは王侯貴族(ハプスブルク家)を顧客に持ちながら、「フィガロの結婚」「ドン・ジョバンニ」などのオペラで腐敗した貴族社会を皮肉をもって描き出した。ベートーベンの「第九」には「王様も乞食も生まれながらに平等だ」という強烈なメッセージがある。歌詞の“歓喜(フロイデ)”を“自由(フライハイト)”に置き換えてみればいい。
このメッセージを伝えるために、交響曲に声楽を入れるというサッカーで手を使うがごときルール違反まで犯している。おかげで危険思想の産物としてドイツ本国で再演されるまで初演から22年もかかった。ジョン・レノンは「イマジン」で争いの無益さを訴えたことで、ベトナム戦争をやめさせた。