著者のコラム一覧
三枝成彰作曲家

1942年、兵庫県生まれ。東京芸大大学院修了。代表作にオペラ「忠臣蔵」「狂おしき真夏の一日」、NHK大河ドラマ「太平記」「花の乱」、映画「機動戦士ガンダム逆襲のシャア」「優駿ORACIÓN」など。2020年、文化功労者顕彰を受ける。

河瀬直美さんの在野精神はどこへ…アーティストは未来の評価を気にかけるべきだ

公開日: 更新日:

 ナチスの将校と恋愛関係にあったデザイナー、ココ・シャネルも不遇な晩年を過ごした。

 仏ファッション界に多大な貢献をした彼女のお墓はパリになく、スイスにある。オペラ「カバレリア・ルスティカーナ」で知られる作曲家マスカーニはムソリーニ政権に協力して、戦後に全財産を没収された。

 考えてみてほしい。ピカソが評価されるのは「ゲルニカ」で戦争の悲惨さを描いたからだ。モーツァルトは王侯貴族(ハプスブルク家)を顧客に持ちながら、「フィガロの結婚」「ドン・ジョバンニ」などのオペラで腐敗した貴族社会を皮肉をもって描き出した。ベートーベンの「第九」には「王様も乞食も生まれながらに平等だ」という強烈なメッセージがある。歌詞の“歓喜(フロイデ)”を“自由(フライハイト)”に置き換えてみればいい。

 このメッセージを伝えるために、交響曲に声楽を入れるというサッカーで手を使うがごときルール違反まで犯している。おかげで危険思想の産物としてドイツ本国で再演されるまで初演から22年もかかった。ジョン・レノンは「イマジン」で争いの無益さを訴えたことで、ベトナム戦争をやめさせた。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高嶋ちさ子「暗号資産広告塔」報道ではがれ始めた”セレブ2世タレント”のメッキ

  2. 2

    大友康平「HOUND DOG」45周年ライブで観客からヤジ! 同い年の仲良しサザン桑田佳祐と比較されがちなワケ

  3. 3

    佐々木朗希の足を引っ張りかねない捕手問題…正妻スミスにはメジャー「ワーストクラス」の数字ずらり

  4. 4

    大阪万博開幕まで2週間、パビリオン未完成で“見切り発車”へ…現場作業員が「絶対間に合わない」と断言

  5. 5

    マイナ保険証「期限切れ」迫る1580万件…不親切な「電子証明書5年更新」で資格無効多発の恐れ

  1. 6

    阪神・西勇輝いよいよ崖っぷち…ベテランの矜持すら見せられず大炎上に藤川監督は強権発動

  2. 7

    歌手・中孝介が銭湯で「やった」こと…不同意性行容疑で現行犯逮捕

  3. 8

    Mrs.GREEN APPLEのアイドル化が止まらない…熱愛報道と俳優業加速で新旧ファンが対立も

  4. 9

    「夢の超特急」計画の裏で住民困惑…愛知県春日井市で田んぼ・池・井戸が突然枯れた!

  5. 10

    早実初等部が慶応幼稚舎に太刀打ちできない「伝統」以外の決定的な差