著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<90>楳図かずおさんの家で「グワシッ!」やったんだよ

公開日: 更新日:

 男の顔の撮影も長年やってるわけだけど、基本は背景が無地でね。顔を撮るときは無地で撮ろうと決めたんだけど、ホテルとか家とかになっちゃうときもあるんだ。でも、そういう状況によって何か具体的なものが後ろに入ると、妙に規定されちゃうわけだよ、見る側が。バックが無地だと、そこにストーリーができるじゃない? それと、もしかしたら被写体の思いも見えるかもしれない。無地にするとでちゃうからね、本人がでるから(1997年より雑誌『ダ・ヴィンチ』で「アラーキーの裸ノ顔」を連載。各界で活躍する男性のポートレートを撮影)。

(漫画家)楳図かずおさん、この間、展覧会やってたよね。おっ、やってんな!って(1月~3月に東京で「楳図かずお大美術展」を開催。9月~11月、大阪に巡回予定)。楳図さんの場合は、彼の家に行って撮ったんだよ。この(まことちゃん人形との)写真ね、こういう出会いがあるからおもしろいんだよ。部屋で撮影してね、帰りにいろんな部屋を見せてもらってさ、そしたら倉庫みたいな所に、こういう人形が置いてあったんだ。

 もう顔を撮ったんだけど、あっ、こっちがおもしろいなと思ったんだ。ここで撮るってね、それは、すぐに判断してやっちゃうんだよ。説明にしちゃいけないんだけどね。現在の、向こうの、生きてる説明っつうのに負けてるよね。でも、これをね、気にいっちゃったわけだよ。

写真はリアリズムではなくリリシズム

 これはね、楳図さんと「グワシッ!」ってやってんだよ(笑)。後ろがドアでね、部屋の向こうからドアを開けて、出てきたとこなんだ。そんで、「グワシッ!」ができないから、「むずかしいな~」って言ったら、もうあるんだよね、できてんだよ(笑)。それを持たせてくれてさ、気にいってるんだ(笑)。

 オレは、男の顔のシリーズを始めてから、写真はリアリズムじゃなくて、リリシズムであると言ってるんだよ。そういうふうに確信を持ったの。相手を凛々しく撮ってさしあげたい。サシでみんな撮りたいっていう時期だからね。みんな、イイ顔してるんだ。それぞれ、みんな素敵なんだよ。みんな素晴らしいって思うんだ。

(構成=内田真由美)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  2. 2

    人事局付に異動して2週間…中居正広問題の“キーマン”フジテレビ元編成幹部A氏は今どこで何を?

  3. 3

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  4. 4

    中居正広氏&フジテレビ問題で残された疑問…文春記事に登場する「別の男性タレント」は誰なのか?

  5. 5

    TV復帰がなくなった松本人志 “出演休止中”番組の運命は…終了しそうなのは3つか?

  1. 6

    "日枝案件"木村拓哉主演「教場 劇場版」どうなる? 演者もロケ地も難航中でも"鶴の一声"でGo!

  2. 7

    フジテレビに「女優を預けられない」大手プロが出演拒否…中居正広の女性トラブルで“蜜月関係”終わりの動き

  3. 8

    別居から4年…宮沢りえが離婚発表「新たな気持ちで前進」

  4. 9

    ビートたけし「俺なんか悪いことばっかりしたけど…」 松本人志&中居正広に語っていた自身の“引き際”

  5. 10

    フジテレビを襲う「女子アナ大流出」の危機…年収減やイメージ悪化でせっせとフリー転身画策

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…