2015-2022「那須川天心vs武尊」の記録(下)2人の立場が入れ替わり「何だか恋愛みたいですよね」
昨年末の会見で「人間関係が壊れる一歩手前まで行きました」と榊原も回想したように、天心の説得は困難を極めていた。どうにか翻意を促し、双方が合意に至ったのが、22年6月19日開催だったのである。最初の対戦表明から7年という歳月が経っていた。
記録を編みながら、筆者は「恋愛に似ている」と感じた。BLに例えたいわけではない。ただ、共通点が存外に多いことに気付く。最初は武尊を追いかけていた天心だったが、住む世界が変わったことで関心を示さなくなった。恋愛においてよくあることだが、そこで立場の逆転を自覚していた武尊が、見えをかなぐり捨て猛アタックを開始。悲願を成し遂げる──というストーリー。いみじくも天心は試合後、こう発言した。
「何だか恋愛みたいなんですよね。惚れてふられて、また戻ってって」
“七年愛”は、天心が初心を貫徹したことで、とにもかくにも、成就したのである。
※次回からは「2003年大晦日の真実」編が再開します。