八月納涼歌舞伎「東海道中膝栗毛 弥次喜多流離譚」は派手さとばかばかしさで暑気払いに正解
第二部の「安政奇聞佃夜嵐(あんせいきぶんつくだのよあらし)」が、今月は芝居としていちばん見応えがある。
明治に書かれ、大正3(1914)年に六代目菊五郎と初代吉右衛門によって初演され、今回はそのひ孫である勘九郎と松本幸四郎が演じている。だが、代々伝わってきたわけではない。あまり上演されず、前回は昭和62(1987)年に、七代目菊五郎と二代目吉右衛門が演じ、それ以来35年ぶり。
主人公2人は囚人で、脱獄し、川を渡るところから始まり、二転三転していく、今風に言えば犯罪サスペンス。騙し合いと裏切りのドラマに、夫婦の再会と別れも絡み、1時間半弱だが、重層的で見応えがある。勘九郎の悪役に凄みが出てきた。
重く暗い芝居の後は、猿之助と團子の「浮世風呂」。舞踊劇で、洒脱(しゃだつ)華やかに終わる。
第三部は幸四郎・猿之助の「東海道中膝栗毛 弥次喜多流離譚(やじきたリターンズ)」。シリーズ5作目で、一応、前作から続いているが、ストーリーはあってないようなものなので、初めて見る人でも楽しめる。「俊寛」のパロディーから始まり、随所に歌舞伎の古典を模したシーンがある。