郷ひろみ“67歳のトップランナー”の源は「思考も表現も心の柔軟性を大事にしたい」
人生って、長い。でも振り返ると短い!
2002年に47歳から3年間、歌い方を学び直すためにニューヨークに移住。“アチチ”のフリで話題になった「GOLDFINGER'99」の人気も冷めやらぬ中、あえてキャリア再構築に臨んでいる。
「いろんなことは考えたけど、自分の必要なものは手に入る。僕は手に入らない限りニューヨークから帰らない気でいました。自分としてはそのくらい切羽詰まっていた。もし帰国して芸能界に受け入れてくれる土壌がなかったとしても、進化した歌声を体得したことで前に進める自信があったから3年のブランクはリスクでなく、一択でした。僕は一度決めたらやり続けることができるのがいいところでもあって、5年かかろうができるまでするのが努力だと思っていました」
60代になって夏フェスに参加するなど常に果敢に挑戦しているが、決断に失敗はないのか?
「決断は早いですね。逆に決断せずに通り過ぎることはしたくない。僕自身がどこに行きたいのかハッキリすれば、周りのスタッフも迷わないですし、物事がスムーズに進みます。反省はポジティブで、後悔はネガティブ。下した決断は反省材料にして学ぼうとするから後悔はないんです」
一般人にはハードルが高そうだが。
「サラリーマンの方でも収入を上げたいと思えば、何をしたらいいか、もっとお金を使った方がいいのか、お金はどこへ使うべきかマイルストーンが見えてきて、何かを変えていけるんじゃないでしょうか。1回しかないんですよね、自分の人生って。しかも長い。でも振り返ると短い! 自分が信じたことをやり続ければやがて信念に変わる時が来る。そこにたどり着くまでやるんです」
著書「黄金の60代」は雑誌「ゲーテ」に連載し、すべて自ら執筆。読書家という意外な一面も。
「活字世代ですから、中学の頃から、移動中、寝る前は必ず本を読むのが習慣になっていて、今も月に4、5冊は読みます。読書は頭の中で想像する楽しさがあっていいですよね。10代の頃はノンフィクションが好きだったけど、最近はフィクションが多い。連載は毎月400字6、7枚、アマチュアが書くのはなかなか大変です。改めて作家さんたちを尊敬しました」
著書の中で70歳になったら免許返納を考えると、ある。あと3年で返納は必要ないように見えるが。
「70代になったからといって変わらないですよね。でも、そう思っている間に返納するのがいいのかなって。人間って、たくさんのことはできないですから」
今後のビジョンは?
「最近になって“郷ひろみ”って面白いな、天職だなとつくづく思うんです。郷ひろみじゃなかったら挫折だらけだったろうし、郷ひろみをやることで鍛えられたと思う。歌手とダンサーが別だった時代に、たまたま歌と踊りが好きで、独自のパフォーマンスになった。たまたま英文タイプが好きで英語脳ができて、それが礎になり、ニューヨークで新たな歌のスキルを得た……たまたま始めたことの伏線回収ができているのは運もあると思います。でもそれ以上に、大変なだけにやりがいがある。スターである“郷ひろみ”に後れを取ってはいけないし、これからも並走していきたい。こんなステキな天職を見つけましたからね。これからもただただ郷ひろみを極めていくだけです」
■「黄金の60代」(幻冬舎文庫)、アルバム「Hiromi Go ALL TIME BEST」(ソニーミュージック)発売中。22年度中のコンサートの配信も予定、詳しくはHPで。